どうしよう、英語で論文を書くことになった…
大学で研究を行っている理系学生の中には、英語での論文執筆や研究発表の機会にめぐまれる方もいるでしょう。
最近は日本で開催される学会でも、資料の作成や発表が英文で行われることが一般的になってきており、理系の学生にも英語力が求められるようになっています。
自分の研究内容を英語で書くコツは、とにかく論文を読みまくることです!
論文をたくさん読んでいると、ある程度決まった型があることに気付くはずです。
よく用いられる型を習得しておけば、自身の実験条件をその型に当てはめれば良いだけなので、英語で論文を執筆することは難しくなくなります。
この記事では、特に有機合成の分野において用いられる英語の表現 (型) をいくつか紹介します。これらは論文執筆や研究概要の作成、英語での研究発表などに役立つ表現です。
反応方法の書き方
異なる条件下で行われる化学反応を英語で表現する方法をご紹介します。溶媒、反応温度、反応時間は適切な内容に変えて使ってみてください。
加熱反応の場合
A solution of 〇 (XX mg, YY mol) and △ (X’X’ mg, Y’Y’ mol) in toluene (ZZ mL) was heated at 100℃ for 24h.
〇 (XX mg, YY mol) と△ (X’X’ mg, Y’Y’ mol) の溶液をトルエン中で100℃で24時間加熱した。
実験方法は、受動態で記載するのが基本です!
環流条件で反応を行う場合
The mixture of 〇 and △ in toluene was refluxed under argon atmosphere for 24h.
〇と△の混合物をトルエン中アルゴン雰囲気下で24時間還流した。
〇、△には出発物質名を入れてください!
環流とは、溶媒が蒸発と凝縮を繰り返している状態です。アルゴン雰囲気下という条件は “under argon atmosphere” と表現します。
クエンチする場合
After stirring for 3h at room temperature, the reaction mixture was carefully quenched with water and 2N H2SO4 at 0℃.
室温で3時間撹拌した後、反応混合物を0℃で水と2N 硫酸で注意深くクエンチした。
クエンチとは、「急冷により反応を止める」ことを指す化学分野の専門用語です。 “quench with ~ at 0℃” のように~を用いて何℃でクエンチしたと表現することが多いです。
反応名を示したい場合
This compound was prepared by a Diels-Alder reaction.
この化合物はDiels-Alder反応により生成された。
抽出方法の書き方
分液漏斗を用いて、粗生成物から目的の化合物を抽出する操作の表現を紹介します。
分液漏斗を用いた抽出
The obtained mixture was diluted with ethyl acetate and washed with water (3-4 times). The aqueous layer was again extracted with ethyl acetate. The combined organic layer was washed with saturated aqueous NaHCO3 solution and dried over Na2SO4.
得られた混合物を酢酸エチルで希釈し、水で3, 4回洗浄した。水層を再度酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。
「抽出する」は英語で “extract” と言います。 “extract with 溶媒名” のように使用されます。
溶媒で希釈する操作は “dilute with 溶媒名” の表現をマスターしておくと便利です。分液漏斗で分離した際、水層は “aqueous layer”、有機層は “organic layer” と表現します。
精製方法の書き方
反応によって得られた生成物をカラムクロマトグラフィーを用いて生成する場合と、再結晶により生成する場合に使える表現を紹介します。
カラムクロマトグラフィーで精製する場合
After the removal of solvent under vacuum, the product was purified by silica gel column chromatography with CH2Cl2 as eluent.
真空下で溶媒を留去した後、生成物をジクロロメタンを展開溶媒に用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。
「精製する」は英語で “purify” と言います。展開溶媒は “eluent” と表現することが多いです!
再結晶による精製の場合
The crude product was recrystallized from dichloromethane and collected as a red solid.
粗生成物をジクロロメタンを用いて再結晶し、赤色の固体を回収した。
「再結晶する」は英語で “recrystallize” と言います。 “recrystallized from 溶媒名” で表現されることが多いです!
収率の書き方
反応によって得られる生成物が1つだけの場合と2つ以上の場合、それぞれのケースにおける表現方法を紹介します。
生成物が1つの場合
The formed precipitate was collected by filtration, washed with water, and then dried in vacuum to afford the compound as a white solid in 90% yield.
生成した沈殿物をろ過で回収し、水で洗浄した後、真空乾燥して、白色固体として収率90%で得た。
収率を書くときは “in XX% yield” という表現が便利です!
生成物が2つある場合
The compounds 〇 and △ were prepared in 25% and 60% yields, respectively.
化合物〇と△はそれぞれ25%と60%の収率で得られた。
生成物が2つある場合は “in XX% and YY% yields, respectively” と書きます。
自身が行っている実験条件を当てはめてこれらの表現を使ってみてください。
理系英語の発音練習
研究発表を口頭で行う際には、物質名や実験器具の英語の発音が日本語のカタカナ読みと大きく異なることがあるので注意が必要です。
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